15分間の問診技法

15分間の問診技法―日常診療に活かすサイコセラピー
15分間の問診技法―日常診療に活かすサイコセラピー玉田 太朗

医学書院 2001-03
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おすすめ平均 star
star実際の診療に役立つ面接テクニック
star診察室でのサイコセラピー

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インテーク面接のとき、何から聴けばいいか迷ったりしませんか。とてもいい面接技法がありますよ。
イギリスではどんな病気でもまず「一般医」が診察します。日本みたいに「患者のほうが自分の受診科を決めてそこの専門医に相談する」という習慣がありません。一般医というのは家庭医のイメージですね。子どもの頃からの掛かり付けのお医者さん。どんな分野の治療でもひとまずはこなすことが出来る。そして応急処置をしてから、その疾患に応じた専門病院を紹介してくれるシステムになっています。そりゃあ、いきなり専門医のところに行けば、その専門医の知っている範囲の疾患として扱われるから誤診が起こりやすい。無駄に長期化するか、かえって有害。「インフォームド・コンセント」には「あなたが決めたことでしょ?」という責任の押しつけが入ってます。患者側が病気について知識を持っていないと生き残れないのが日本のシステム。
イギリスでは、日頃から付き合いのあるお医者さんが診察してくれるわけで、そういうところでこそ精神分析は活かせる。そう考えたマイクル・バリントが広めたのが「全人医療」。どんな疾患でも、そこには生物学的な背景・心理学的な背景・社会的な背景があり、それらが交互作用を起こしていると見る。これって、認知行動療法のラザラスが唱えた「ストレス脆弱説」に似てますね。まあ、この3つの背景を押さえないと治療方針は決められない。それもたった15分で。出来る? はい、出来ます。そのためのBATHE法の解説がこの本に書かれています。
BATHEとは、問題の背景・問題への感情・困っていること・それへの対処・患者への共感の5つを言います。英語で書くと、頭文字がBATHEとなる。この順に問診すると、15分でおおまかな全体像が捉えられるわけ。よく考えてあるよなあ。アサーティブで「DESC」ってあるじゃないですか。気持ちを鎮めつつ、相手と衝突せずに自己主張を行うための手順。それとBATHEは重なってます。BATHEの最後の「共感」の段階で、患者さんの代わりにアサーティブを行う感じ(共感は同情じゃないよ。相手の立場で考えるってこと)。「そうそう、先生、それが私の言いたかったことです」となります。患者さん自身の立てた治療方針だから、納得の上で相談を進めていける。
日本には「一般医」はいないわけだし、ケースによっては相談の入り口が「カウンセラー」となってる側面がある。でも初心の間だとうまくラポールが築けないんですよね。それと、変な心理学教育を受けてるせいで、身体的な側面を見落としやすい。そんなときは「お医者さんの卵」に向けて書かれた本が参考になると思います。
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=4112