化学物質過敏症家族の記録

化学物質過敏症家族の記録 (健康双書)
化学物質過敏症家族の記録 (健康双書)小峰 奈智子

農山漁村文化協会 2000-08
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朝、学校に行くとなると、決まって子どもが頭痛・腹痛を訴える。学校に来なくなる。けれど休みの日は、友達と楽しそうに外で遊んでいる。担任が家庭訪問してみると、目も虚ろな母親が出てくる。台所にはゴミ袋の山。担任の前で、たわいもないことでカッとなった母親が子どもを殴る。「親の育て方が不登校の原因だ」。そう教師は直感する。スクール・カウンセラーに相談の依頼が来る。
こういうパターンの「不登校」では、見落としてはならないことが一つある。化学物質過敏症だ。現代社会は日用品の中に多量の化学物質が使われている。もし花粉に反応する花粉症のように、化学物質に反応する疾患があるとしたら、この社会がどれだけ住みづらいか想像できるだろうか。そして、実際にそういう疾患がある。アレルギーやアトピーに似ているが発生機序が違うらしく、一度化学物質に抗体が出来てしまうと、その物質以外でも体調を崩してしまう。微熱が続き、眠れず、ケガの治りも遅い。精神的に無気力となり、疲れやすく、自分をコントロールできなくなる。そういう恐ろしい疾患が化学物質過敏症だ。
1980年代に報告されながら、厚生労働省が調査に乗り出したのは2003年になってから。殺虫剤や防腐剤に含まれる有機リンが引き金として疑われている。どれにも「生命体を殺す」という作用がある。基本はナチスが開発した殺人ガスの応用なので、人体に無害なわけが無い。通常は、そうした薬剤との接触が短時間なので、大事には至らない。一つ一つを見ればね。ところが幅広く使用され過ぎた。場所を変えても抗菌剤が使われてたり、シロアリ駆除剤が撒かれてたり。もし接触せずに済む時間がゼロになれば、めでたく化学物質過敏症の発症だ。そして誰でも、その可能性がある。
実は、ネズミなどの動物を有機リン化合物に長期暴露すると「多動症」が観察される。この研究が気になる。もし「教室で騒がしい子」がいるとして、その教室が新築の校舎であったら、まず考えられるのは防腐剤じゃないか。それを「ADHD」と診断し、見逃してそうだ。で、もっと困るのが、慢性化すると消毒液の匂いにも反応すること。病院を受診すること自体が、命に関わる危険な行為になる。まだトリガーになる物質の確定が出来てないので、この疾患の存在自体を疑う医師も多い。でももし、一種類の物質が原因ではなく、複数の化学物質の混ぜ合わせ(食い合わせ?)というオチだとすると、実験室で「原因究明」はムリだろう。これってもっと周知し、悪化する前に環境調整しないとマズくないか。
http://www.cssc.jp/cs.html