行く羽目になった心理士の人たちに

心の相談緊急電話開設のお知らせ(東北地方・太平洋沖地震対応)
 電話番号:0120−111−916(フリーダイヤル)
 開設日時:2011年3月19日(土)〜4月23日(土)
      午後1時〜午後10時
http://www.jsccp.jp/info/infonews/detail?no=93


臨床心理士会が「心のケア」の電話相談を始めた。各地域でのサポート情報が欲しい場合、こちらに掛けてもらえれば紹介してもらえるようだ。これは現時点での現実的な対応だと思う。
と、思っていたら、岡山とか各都道府県レベルの心理士会では、現地に「被害者支援」と銘打って心理士を派遣することになったらしい。精神科医に動いてもらって、不眠などの対策をしてもらうのは必要だと分かるけど、それ以外の心理士は何をしに行くのだろう? 行くほうも迎え入れるほうも「お可哀想に」としか思えない。


とはいえ、行く羽目になった心理士の人たちに。
まず、自分自身のストレス反応に気をつけてください。個人的な経験では、被災地に入ると妙にハイテンションになります。それは「何かせずにいられない」という責務感から来るマニック・ディフェンスです。躁的防衛。それがないと乗り越えられない状況だから、積極的に軽躁状態を活用しながら、でも自分の睡眠や食欲をモニターしてください。眠れない状態が続いても、身体を休める時間は取るように。睡眠時は身体を冷やさないよう、厚手の服を着ること。それから出来れば、枕かパジャマか、自分の慣れ親しんだものを持ち込み、それを移行対象として安全基地にすること。
セラピストの役割は、相手のこと云々より先に、自分自身を「平素の状態」に保つことが先決。自分の落ち着きが周囲に伝染するよう心がけることです。それには上で書いたように、睡眠・食欲・安全基地が不可欠です。自分の身が出来て、初めて人の身に立てる。それが出来ないうちは、物資を運んだり、身体を動かすほうに従事してください。それが「作業療法」になって、その間に心の準備が整いますから。
二つめは、孤立しないこと。被災地での単独行動は危険です。少なくとも二人でペアを組み、行動してください。それといつでも、携帯電話かインターネットに接続できる用意をしておくこと。常に誰かと繋がれるという安心感は、そうした場では何物にも代え難い。同時に、被災者の人への支援も「人と繋がっている」という感触を取り戻してもらうことになると思いますが、セラピストが孤立感を持っているとうまく行きません。「自分の後ろには、いろいろな人のサポートやバックアップがある」という感覚をまず自分自身に築くようにしてください。
三つめは、被災地の人を「被害者」と思わないこと。被災地復興のための「仲間」です。手伝ってもらえることは手伝ってもらいましょう。そして、手伝えることは手伝いましょう。お互い「相手の役に立っている」という感覚が、無力感に陥らない秘訣です。「現場ではマンパワーが不足している」という認識は、被災者の人たちを「仲間」と思っていない傲慢な考えです。子どももお年寄りも、すでに何かしら助け合っているので、その点を明確化して返し、その人たちの共同体感覚を大切にしてください。心理士だけが先走ることの無いように。
あと、無事に帰ってきますように。どんな場面に出くわしても、まず自分の身の安全を優先しますように。「あなた」を待っている人がいるのですから。