自分の仕事をつくる

自分の仕事をつくる (ちくま文庫)
自分の仕事をつくる (ちくま文庫)西村 佳哲

筑摩書房 2009-02
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順番を間違えた。昨日の本より先にこちらを紹介するべきだった。


 家具屋の店頭に並ぶ、カラーボックスのような本棚。仕上げは側面までで、裏面はベニア貼りの彼らは、「裏は見えないからいいでしょ?」というメッセージを、語るともなく語っている。


始まりの文章から心が惹かれました。世の中に溢れる品物のデザイン。きしむ職場のとびらやテレビから流れるニュース、政治家の答弁やすぐに壊れるパソコン・ソフト。どれもが「あんたたちには、これくらいでいいでしょ?」というメッセージを投げかけ合っている。お互いの価値を軽んじるメッセージ。呪いですね。気づかずに投げかけ合って、自分自身もその渦に呑み込まれ、日々の仕事を「これくらいでいいでしょ?」と閉じる。だって、それくらいしか出来ないんだから。お互いさまじゃない?
この空気は苦しいなあ。その中で、丁寧なデザインを心がけている「職人」たちがいる。インテリア・デザイナーからパン屋さんまで、どの仕事にもメッセージを込めることが出来る。「あなたのことを大切に想っています」というメッセージ。それは気持ちいい。その気持ちよさはどこから来ているかたどる対談集です。「仕事」が、見えない誰かとメッセージを交し合う手段だと意識している。読んで思いますが、どの人も欲深いんですよね。「自分を大切にしたい」という欲望を持っている。だから、自分に矛盾を作らない。「これくらいでいいでしょ?」という限界がない。それが自分自身の仕事として、形になって表れる。ここを目指したいなあ。
これを読むと、素敵なデザインが生まれてくるのが、デザイナー自身の「あり方」に根ざしていて、だから西村先生が昨日の「かかわり方のまなび方」に移っていくのが分かりやすくなると思います。