クリーン・ランゲージ入門
クリーン・ランゲージ入門―〈12の質問〉にもとづく新コーチング技法 | |
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そんな影響もあってか、最近ビジネス書のほうが「心理療法」っぽくなっている。NLP系列のクリーン・ランゲージ技法。1980年代にディヴィッド・グローヴがPTSDの治療法として開発したテクニックが、いま企業内コーチングに取り入れられ、問題解決技法として使われている。悩みを抱えている同僚を援助するのに、たった12の質問を駆使するだけで済む。やってることはフォーカシングだが、誰にでも取っ付きやすいのが決め手だろう。そして間接的な効果として、社内に相互援助のネットワークを作ることで、孤立し燃え尽きてしまう社員を出さない。ピアカウンセリングによって「うつ病」を抑止していく。バブル後の日本のような「年間3万人の自殺者」などという「惨状」を引き起こさないための自衛策である。
さて、新しい理論や技法を覚える最善の道は「もし自分が開発者なら、この理論をどう説明するだろう?」と考えることである。丸覚えしたところで、そこに自分の実感がこもらないなら、わざとらしさが漂ってしまう。どうせ自分が使うのである。使いやすいように組み替えておこう。12の質問も、自分が使うなら9つで済む。クリーン・ランゲージのポイントは「抽象的な言葉に囚われている状況を、一度メタファー・レベルに置き換えることで柔軟にし、そこから解決像を組み上げる」という考え方。それに合わせて、質問群を分けてみる。
1)根幹の質問(likeとwant)
「そのXは、何のようですか?」
「Xは、何がどうなるといいと思いますか?」
2)深める質問(whatとwhere その1)
「そのXは、どんな種類のXですか?」
「Xは、どこあたりにありますか?」
3)広げる質問(whatとwhere その2)
「その後、何が起きますか?」
「Xは、どこから来てますか?」
4)進める質問(needとcan)
「Xのために、何がどうなることが必要ですか?」
「Xになることは、可能ですか?」
深める・広げる・進める。いずれにも「他に何かありますか?」は要るので、とりあえず9つの質問。状況をメタファーに喩え、そのファンタジーと戯れると、いつのまにか状況の見方が変わってくる。メタファー・シンキング。そのとき、質問する側の価値観を交えてはいけない。良し悪しの話を出すと、思考レベルがメタファーから現実に引き戻されるからだろう。クリーンな空間を用意する。メタファーのなかに身を置く。日頃やってないからこそ、少しでもそうした時間を取ると、認知が変容する。別の解決策が見えてくる。まあ、メタファーに治療的効果があるから箱庭療法や夢分析があるわけで、そういうのが苦手なタイプの人に合わせ、クリーン・ランゲージが作られたのだろう。もとがPTSDの治療法だというのも納得がいく。他の技法と併用しやすいテクニックだと思う。