スラムダンク論語

スラムダンク論語
スラムダンク論語遠越 段

総合法令出版 2010-04-23
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もし無人島に流されてしまうとして、一冊だけ本を持っていっても良いとしたら、何を選ぶだろうか。たぶん、それが古典であれば「論語」である。もしマンガに限られるとしたら、何にするだろうか。もちろん「スラムダンク」だ。その場合は一冊ではなく、全巻必要だけど。なぜ「論語」と「スラムダンク」なのかと言えば、それが名言の宝庫だからだ。名言とは小手先のテクニックではない。だいたい、これから無人島に行くのにハウツー本は役に立たない。必要なのは身体の底から湧き出してくる言葉。それが「名言」である。
この「スラムダンク論語」は、スラムダンクのセリフの後に論語の一文を並べ、その類似性について著者が2ページほどの感想文を載せる安易な構成。60本ほど、そんな感じの話が続いていて「これで本になるんだったら誰でも本を書けるよ」と思うんだけど、良い本だ。スラムダンクが良い。論語が良い。素材が良いから、それだけで泣けちゃいます。遠越段自身も、そんな良い文章を書いてるわけじゃないけど、この2つに惚れ込んでるのが伝わってくる。特に「君子」を「成長する人」と訳してるのが良いね。そうだ。君子は完成体ではない。常に向上し続ける「途上の人」のことなのだ。


 安西先生! バスケがしたいです・・・
 「過ちて改めざる、是れ、過ちと謂う」


身体を壊し、不良グループに入っていた三井寿が、自分の中にある「バスケへの愛」に気づいたときのセリフ。これと孔子さまの「過ちて改めざる」とを組み合わせるのは反則だなあ。響き合ってます。自分が間違っていたことに気づいたとき、それを認めるのが勇気です。自分と闘うことです。そして、自分と闘える人間だけが、自分にしかできない道を突き進むことが出来ます。孔子さまは過激な人です。社会に組み込まれ安住する人間を嫌います。己の欲望を譲るな。どこまでも真っ向勝負で行け。