体感する社会学
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ただ、「常識A」を疑うために対抗馬として出してきている「実はB」の部分がダメだわ。「拒食症は女性性の拒否」とか「精神病の原因はダブル・バインドな母親の態度」とか、それって「心理学」なんかではない。一般に流布している「常識B」に過ぎないよ、それは。一般向けの「心理学本」って、著名人によるハウツー本かお説教本であって、臨床心理学と関係ないし。脱常識というのなら、むしろその「常識B」も疑ってほしかったなあ。
というか、「常識」を覆すために「別の常識」を持ち出す段階で、自分が言っている「脱常識」が分かってないんじゃないかと思う。「実は〜なんだ」という文体自体が、自己予言成就を起こすラベリングじゃないのかな。ただ単に「別の常識」にすげ替えても「脱常識」にはならない。社会学の先人たちがやってきた仕事をきちんと掘り下げてみてよ。彼らは本当に「常識」と闘い、「別の常識」も拒み、新しい切り口を提供し続けることに自分の人生を捧げてくれているから。心理学も、どう「ドミナント・ストーリー(その人の信じ込んでいる常識)」を解体していくかに焦点が移り「症状Aの原因はBである」みたいな思い込みを壊す仕事になってきているので、社会学の「脱常識」はとても参考になります。だから、それをくだらないものにしないでくれ。