僕のフォーカシング=カウンセリング
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ロジャーズの著書を読んでいると「self-regard」がビッグ・ワードなのが見て取れる。なんて訳されてるのかな。自己配慮？ それだとこの語に含まれる「自尊感」や「まなざし」のニュアンスが消えますよね。なぜか後進者たちには重視されない。「受容と共感」みたいな、端っこの話でお茶を濁されている。そんなので「傾聴」しても何も変わらんでしょう。何も変わらんのを「意味がない」と切り捨てては、切り捨てるほうの「頭の悪さ」を示してるだけ。そこでジェンドリンは「self-regard」を「フォーカシング」と言い換えた。良い戦略です。キーワード化したわけです。自分の中の、言葉にならない感情に焦点を当て、クローズアップしていくフォーカス。ビデオ・カメラのメタファーですね。レンズを回し、ピントを合わせていく。
でもこのメタファーのせいで、かえって誤解が生まれた。それだと「体験」が初めから対象として存在し、そこに意識を向けていく話になってしまう。フロイトの「洞察」が受けた誤解と同じ構造。あらかじめ何かがあったりはしないんです。本当は何もない。「体験学習」とか「体験モード」とか言いたがる人は思慮が足りない。まあ、思考力の低下してる人が「体験」って言うんだし。池見先生はこの関門をうまくクリアしています。何かがあるとしたら、言い表した後。パロールね。道得。言い表すまでは何もない。モヤモヤしてるだけ。ヘレン・ケラーが「Water!」と叫ぶ以前に「water」はない。「水」はあっても「水-体験」はなかった。「water」という言葉によって、ヘレンの世界に「水」が創造される。その事後性こそが「フォーカシング」のポイント。
そういう意味で、フォーカシングを極めた人は自分を「創造神」かなにかと勘違いしちゃうのかしら。人の話、聴かない人が多いからなあ。やっぱりナルシストになる危険性が大。用心してくださいな。
