悩みを聴く技術―ディープ・リスニング入門

悩みを聴く技術―ディープ・リスニング入門
悩みを聴く技術―ディープ・リスニング入門ジェローム リス Jerome Liss

春秋社 2009-01
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もしカウンセリングに興味があるけれど、実際に勉強する時間がない人がいて、その人から「すぐに使えるカウンセリングの本はありますか?」と尋ねられたら、この本を答えると思う。「聴くなんたら」って本は山ほどあるけれど、どれもすぐ精神論に陥る。だいたい、講演好き・話し好きの先生が「相手に対して敬意のある沈黙を」とか言ってもピンと来ない。先生、人の話聴くの苦手じゃん? だから「ディープ・リスニング」である。
「聴く」なんてただの技術。カウンセラーの人柄など関係ない。要は相手から見たとき「この人に私の話が伝わっている」と思ってもらえる聴き方をすれば良い。思いやり深い必要なんてないし、度量が広い必要もない。ただ「聴いてますよ」とフィードバックするだけ。中身も関係ない。「伝える・伝わる」の人間関係がどういう構造を持っているか意識すれば良い。そうすれば、恋の相談も幻覚妄想の話も、同じスタイルで聴くことが出来る。
ただ、この本に注釈を入れるとすると、2点あるかな。このディープ・リスニングを使うには「答を見つけるのはクライエントの仕事」と自覚していること。カウンセラーが代わりに「正しいやり方」を見つけようとするから、面接場面で混乱する。クライエントが自力で問題解決すれば、のちのち同じような困難にぶつかっても、そのクライエントは問題を乗り越えていける。代わりにやってちゃ、いつまでも面接離れできないだろ?
もう一つは、質問を有効に使うこと。「答の見つけ方」というのは、自問自答するスキルのことである。だからジェローム・リスが様々な質問方法を列挙してるけど、大きく見て「体験を観察してもらうための質問」と「新しい体験を作り出すための質問」に分かれると思う。インプットとアウトプットね。それをリズムよく、面接場面で放り込んでいく。どの質問がインプット型で、どれがアウトプット型か意識しながら読み直してもらうと、この本の深さがもうちょっと浮き彫りに出来るんじゃないかな。