ゆらぐ脳

ゆらぐ脳
ゆらぐ脳池谷 裕二 木村 俊介

文藝春秋 2008-08-07
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おすすめ平均 star
starゆらぐ研究者
star脳科学者のリアルなぼやきの読み物
star普通の本

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東京大学薬学部の池谷先生の「自分史」的なインタビュー本。脳科学について楽しい本を書く若手研究者ですが、「どうしてそんな画期的な研究が出来るのか」という踏み込んだ内容になってます。だって、『ネイチャー』レベルの研究を連発できる発想法。一般に考えられている「科学観」と全然違うんだもん。こうでないと「世界」を舞台にして闘えないんだろうなあ。
「わかる」とは何か。「因果関係」とはどういうことか。仮説を立てない方法はあるか。これ、「科学の土台」です。このレベルで考える。分けずに「全体」を捉える方法といえば「音楽」があるなあ、じゃあ、ニューロンレベルでの活動にそれぞれ「音」を割り当ててみたら、どうなるだろう? そう考え、実際に実行する。すると、脳が全体があるリズムを奏でていることが捉えられた。なんて不思議なこと!
この人、「遊び」を分かってると思いました。面白そうだ、やってみよう。「好奇心」を信じている。ゴールを設定し仮説を設定して、それに向けて実験してみても、最初の「ゴール」や「仮説」は既知の範囲でしかないから、出てくる結果も既知にしかならない。それは科学に貢献しない。「仮説」に合わないものはノイズとして捨てられてしまうけど、でも本当はそのノイズのほうが面白いんじゃないか。そこに、更なる未知に近づく道があるんじゃないか。その道を突き進み、成果を挙げている。
自分の理論に合わせた質問紙を作ってセラピーの前後を測って「効果がありました」なんて臨床心理学の研究は、それこそ放火魔のマッチ=ポンプに過ぎず、他の科学から見たらまだ「19世紀レベル」なんでしょうね。ほんと、恥ずかしいわ。