分裂病と家族の感情表出

分裂病と家族の感情表出
分裂病と家族の感情表出J. レフ C. ヴォーン 三野 善央

金剛出版 1991-01
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戦後、戦争孤児の示す精神症状から「愛着」についての研究が進み、まるで全ての精神障害が「親の育て方」に起因するかのような暴論が跋扈した。無論そうした仮説は調査で検証できる。すると統合失調症の「初発」に関しては、どんな家族でも同じように起こることが分かった。120分の1の確率で誰にでも。その代わり「再発」は、あるタイプの家族に偏って起こっていた。それが「高感情表出家族」である。精神科医は、再発を繰り返すタイプを診察する機会が多いので、何となく「家族が悪い」という印象を持ってしまったのだろう。
さて、レフ&ヴォーンの研究の深いところは、そうした「高感情表出家族」の簡単な見分け方と予後データを提示したことだけではない。それだけでも「家族因説」を転覆させた功績はあるのだが、さらに「高感情表出家族」に「ある手立て」を取ると、90%を超えていた再発率が10%台に落ちることを発見したことにある。調査がきちんと治療論になっている。
その「手立て」とは、医者が家族の労をねぎらい「分裂病」について告知すること。「分裂病」は、マスコミなどを通して「危険な狂気」という誤解が振りまかれている。血走った目でチェーンソーを振り回すような、ね。でもね、そんなふうには出ないんだよ、この病気は。どちらかというと、人と会うと緊張してしまい、不安で眠れず疲労困憊してしまう「消耗の病い」である。薬で睡眠を確保すれば、まずは落ち着く。そうした見通しを持てれば、家族が自分の子どもを責める必要がなくなり、家庭内のストレスが下がることで統合失調症の再発も抑えられる。
「正確な理解をしてもらう努力を治療者が怠ってきた」というのが、この「再発率」の正体。「あなた」が彼らを再発させていた。古典的な名著だから、一度は目を通しておくといいよ。