心をはなれて、人はよみがえる

心をはなれて、人はよみがえる―カウンセリングの深遠
心をはなれて、人はよみがえる―カウンセリングの深遠高橋 和巳

筑摩書房 2007-06
売り上げランキング : 81832

おすすめ平均 star
starさるきちの中のちっちゃなさるきち。
starふわぁとした「あたたかさ」、じわぁと広がる「開放感」

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都立松沢病院の医長だった高橋先生。脳機能マッピングをされてた割に、どの本読んでも線香臭い。仏教的というか。まあ、好きな匂いだけど。
人間は生命体として常に情報の入出力をしている。生き物だからね、環界の中で暮らしている。でも、いちいちそいつを意識しちゃあいない。そんなことしてたら、膨大な情報量を扱う羽目になってメモリー・オーバーしちゃうのさ。だから適度に「認識の制限」を掛けている。とりあえず、人間社会で生きていける分の情報だけ認識していれば良い。そこを「自我」と呼ぶわけ。ここには、それまで有効だった生活様式が入っている。それをやり繰りしてれば、日々なんとかやっていける。
でもいつか、その「自我」をバージョンアップする日が来る。年齢とともに成長したり衰弱したりするわけだし、環界もいつまでも同じというわけには行かない。そんなときに生命体レベル、つまり「大我」から「バージョンアップのお知らせ」が送られてくる。それが「精神症状」だ。「当社のサポート期間は終了しました。すみやかに新しいOSに切り替えてください」。すっと切り替えれば良いんだけどね。古いバージョンにも愛着がある。新しいのが本当にベンリという保証もない。Vistaのときはどうだった? ユーザーは騙されて、高いバージョンアップ代で、やたらと重いOSに苦しんだじゃないか。なかなか切り替えは進まず「症状」は慢性化する。
高橋先生のすごいのは「新しいOSはどうなるか」の見通しを立てるのが早いところ。初回面接でもう見通しの話を患者さんにすることがある。そりゃあ安心するだろう。3週間後にはもう「症状」は消えている。切り替えに同意してるからね。さらにすごいのは、見通しが立たないときは「ほほぉ」「大変でしたね」くらいしか言わない。後は黙って患者さんの話を聴いている。見通しが浮かぶのを待っている。