山上敏子の行動療法講義

山上敏子の行動療法講義with東大・下山研究室
山上敏子の行動療法講義with東大・下山研究室山上 敏子 下山 晴彦

金剛出版 2010-08-31
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行動療法の第一人者、山上敏子先生が東大の学生たちに行った集中講義。ああ、これが行動療法だよ。なんて自然で美しい。下山先生のマヌケなコメントがさらに美しさを引き立てている。
まずスタンスがいいね。クライエントの先に進まない。ずっと寄り添っていく感じ。下手な行動療法家は「Aが出来たら次はB、Bが出来たら次はC」って引きずり回すでしょ。やたら「効果」を急ぐ。自分が有用だという証拠が欲しいんだろうね。「効果」とか「エビデンス」とか欲しがる段階で、もう下手なのは分かってるのにね。
でも山上先生は急がない。Aが出来てるときに「Aが出来てるわね。じゃあ、次もAしてみようか」と誘う。「自分は何もできない」と思っているクライエントの「できているところ」を発見して、その驚きをともに味わっている。だから前に進む。対人恐怖症の人が半年で仕事をしてたりする。しかも、その人らしさを失わずに。
あと、山上先生がさりげなく使っている質問は、俗に「クローズド・クエスチョン」と言われるものだけど、これがすごいな。「ハイ・イイエで答えられる簡単な質問」と思われがちだけど、そうじゃないんです。「ハイ・イイエ」で答えられて、なおかつ治療的な質問というのは、それだけクライエントの立場について考え抜かないといけない。生きた作業仮説を構築していく。本物の「共感的理解」だね。頭使うよ、これは。