発達障害の早期支援
発達障害の早期支援―研究と実践を紡ぐ新しい地域連携 | |
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今の発達障害についての言説は、理論的には1980年代にローナ・ウィングが唱えたスペクトラム論で、「心の理論」仮説や共同注意について独自発達が自閉症圏の人たちに見られるという研究成果に触れながら、治療論になるといきなり1960年代の応用行動分析や、精神分析の末裔であるTEACCHになる。確かにそれらに一定の効果はあるが、ちょっと理論と実践が捻れすぎじゃないか。そもそもマイケル・ラターの言語認知障害説、つまり「先天的にコミュニケーション障害がある」という理論を否定する形で「コミュニケーション障害の無い自閉性障害」として「アスペルガー症候群」という切り口をウィングが提唱したはずだ。
糸島プロジェクトは、主に共同注意に関する発達に注目し、その段階的な進み方を描き出すことに成功している。指さしの使い方がこれほど多彩で、しかもそこに「順序」が存在するという視点は、臨床場面でも有用である。自閉症の子どもも、人との交流を求めている。ただそれを「定型発達」の思い込みで修正するアプローチでは心許ない。その子には、その子の「発達」がある。発達段階を頭に置かずに「教育」などありえない。