飛び跳ねる教室

飛び跳ねる教室
飛び跳ねる教室千葉 聡

亜紀書房 2010-09-30
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「飛び跳ねる教室」は通勤電車の中で読んではいけない。職場の机で読んでもいけない。家のリビングで読んでもいけない。ダメだ。歳取って涙腺が弱くなったか、ぐちゃぐちゃになる。
詩人の千葉聡が、中学の教員を務めた六年間を綴った本。「キモッ」「死ね」という言葉に、僕自身、中学生を教えていた時代のことを思い出した。そうなんだよなあ、それが「あいつら」なんだよ。とても残酷。生意気。人を嘲笑う。こちらの心は掻き乱されてしまう。それを「短歌」というスナップショットで千葉先生は写し取っている。ほら、キレイだろ。生き生きしてるだろ。苦しんでるんだ。何度も教師を辞めようと思いながら、千葉先生は生徒たちに支えられ、「いい先生」に育ててもらっている。それを自覚してるところがいいなあ。生徒たちを自分の「保護者」だと気づく瞬間。こいつを、下手な美談にしないのがいいね。だって、そういうことはさ、無力感に苛まれ「自分はダメダメだ」と泣きながら、気づくことだから。


 殴り合いを止めれば「こいつがバスケットボールを蹴ったからだ」と泣く子


たった一行に、子どもたちのいろいろな想いが見て取れる。学級経営のうまくいく年もあれば、ストレスで血を吐く年もある。夜を駆け回り、あちこちに頭を下げ、それでも肝心の悪たれどもはケロッとして「腹減った」とか言ってる。バカヤロー。可愛いじゃないか。現場を離れるとね、思い出すのは「静かな授業風景」なんかじゃない。それぞれの子どもが、自分に向けてくれた笑顔や泣き顔、はにかんだ顔が思い浮かぶんだよ。それって、どんなに「こんな仕事、辞めてしまおう」と思っても辞められない魔力があるわけよ。
そんなわけで千葉先生、まだ教師を続けてられるようです。ハマったかな。